【出典】札幌市保健所
おう吐物や便に含まれるごくわずかなノロウイルスが、食品(食事)等を介して腸管に感染・増殖し、おう吐、下痢、腹痛を引き起こす病気をノロウイルス感染症と呼んでいます。
近年では2006~2007年と2012~2013年に大規模流行しました。
ノロウイルスが他の感染症と異なるのは、ごくわずかなウイルスが増殖して症状をおこすことです。
ノロウイルスはアルコールでは殺菌できず、環境中で20日以上も感染力を維持します。
症状がまったく出ずに感染している状態が続く感染者が1%程度いることも、普段の衛生対策による予防を難しくしています。
ノロウイルス感染症に有効な治療法はなく、発症した場合点滴などの対症療法がおこなわれます。
下痢止めは病気の回復を遅らせるといわれており、むしろ使用を控えるべきといわれています。
ノロウイルスに感染したら
水分補給をする
下痢や嘔吐による脱水を防ぐため、経口補水液やスポーツドリンクで水分補給しましょう。
感染初期には下痢止めを飲まない
ノロウイルスはヒトの腸内で増殖します。無理に止めてしまうとウイルスを体の中に留めてしまい、さらに増殖するリスクがあります。
有効なワクチンがないために、普段の生活での予防を心がけることが必要になります。
ノロウイルス感染症は健康なら数日で自然に回復することから、必要以上に恐れる必要はありませんが、症状がおさまった後も長期間ウイルスが排出されているので注意が必要です。
普段から感染しないように食べ物や家族の健康状態に注意する。
症状があるときは、食品を直接取り扱う作業をしない。
学校や企業などでは症状が出たときに、すぐに責任者に報告する仕組みをつくる。
消毒
塩素消毒
洗剤などで充分に洗浄し、塩素系漂白剤で浸しながら拭く。
【出典】厚生労働省
ノロウイルスは感染力が強く、一般的な衛生対策だけでは完全な防御は困難とされています。
近年ラクトフェリンのノロウイルスへの効果が研究されています。
ラクトフェリンは、ウイルスの感染初期に有効な「自然免疫」を高める働きがあり、実際ラクトフェリンの投与によってノロウイルス感染の割合が減ることが報告されています。
ラクトフェリンを100mg含む食品を週にそれぞれ1回摂取するグループから7回摂取するグループまで分けて比較したところ(下図)、4~5回、および7回のグループで1回のグループに比べ、ノロウイルスによる胃腸炎にかかる人の割合が減少していました。
【出典】J Infect Chemother. 20 666-671 2014
統計的に観察結果の差が誤差ではないことを「有意」という
【出典】一般財団法人 東京顕微鏡院webページ
ノロウイルスの対策の困難さは、通常の衛生対策では予防が困難であることに加え、ウイルスの排出が症状回復後も続くことにあります。
ラクトフェリンの摂取によりノロウイルスによる感染が減るだけでなく、感染してもウイルスの排出期間が短くなることは、重要な結果と言えます。