ラクトフェリンは母乳・牛乳(以下、「ミルク」)中で「赤ちゃん」を守る働きをしていると考えられている
タンパク質で、2000年頃よりサプリメントに応用され、現在では子どもから高齢者まで
人の健康を保つ最も重要な成分の一つと考えられています。
ラクトフェリンは、涙、唾液、血液などの外分泌液中に含まれている鉄結合性の糖タンパク質で、そのラクトフェリンが多く含まれるミルクは、赤ちゃんの栄養源としてだけでなく、子どもを長期間守る仕組みやからだを健やかに成長させる成分が完璧に揃っている食品であると考えられています。
例えば、馬は生後数時間で立って歩けますが、人の子どもは約1年後にようやく立って歩けるようになる、というように人は他の哺乳動物に比べて、より未熟で無力な状態で生まれ、長い時間をかけて育てられるという特徴があります。
母乳に含まれるラクトフェリンの濃度は他のどの哺乳動物のミルク中に比べても圧倒的に高い(乳中のタンパク質の約10%~30%)ことが分かっており、研究者たちはこの赤ちゃんを守る機能(免疫力)が、大人や高齢者にも活用できるのではないかと考え、様々な研究を行なうようになったのです。
※乳中のラクトフェリン濃度をその後も比較的高い濃度を半年以上保ちます。
ラクトフェリンは、感染防御機能や免疫を調節する機能だけでなく、現代では痛みや不安を調節し、睡眠も調整していることが分かってきました。
我々は常時、数百種類もの病原体の攻撃にさらされ、1日にがん細胞が数千個発生しているといわれますが、
簡単には感染症にもがんにもなりません。
仮に病気になっても、回復できる仕組みも備わっています。
全ての脊椎動物には、このように体内に入ってきた細菌やウイルスなどの病原体やがんなどの
異常細胞を体から追い出し、生命を維持回復する仕組みが備わっていて、それを「免疫」と呼んでいます。
一方、カイコなどの昆虫を含む無脊椎動物は抗体を作ることができませんが、
抗体を持たない無脊椎動物にも免疫力がそなわっていることが近年になって明らかになっています。
この免疫は区別して「自然免疫」と呼ばれ、ヒトを含む脊椎動物にも存在しています。
病原体が体内に侵入したときに「獲得免疫」より先に機能し、感染の最初の段階で防御の役割を果たします。
免疫グロブリンとも言われ、体液中で異物を認識して結合するタンパク質
生まれた直後はお母さんのミルクで守られていた赤ちゃんも、自身の免疫ができあがり、成人しやがて歳を重ねるようになります。
ヒトの免疫のうち、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃するNK細胞(用語集)ががん細胞等と戦う細胞の強さ(これを活性といいます。)は20歳をピークに40歳でほぼ半減し、60~70歳代では10%前後まで低下することが分かっています。
加齢に伴ってNK細胞だけでなく、外界からの異物(抗原)を認識して免疫細胞に情報を伝達する仕組みや血管の炎症を調節する仕組みなど、多くの免疫機能が変化していきます。
例えば、加齢によって、ワクチンを接種しても効果が表れにくい状態(獲得免疫機能の低下)あるいは血管の炎症(慢性炎症)によって動脈硬化の進行が起きるようになります。
免疫機能が弱くなるだけでなく、逆に過剰に反応し過ぎることも、老化に伴う免疫の変化の特徴であることがわかってきました。
加齢に伴ってがんや痴ほう等の病気の発症率が上昇し、その一方で病院での治癒成績が悪化するのは、こうした免疫の変化に大きな原因があると考えられます。
偽薬(プラセボ)を用いて、対象のサプリメントの有効性を調べる方法
これらの結果は、腸まで届く、腸溶性タイプのラクトフェリンを高齢者が3ヵ月間摂取することで、「自然免疫」の中で重要な役割を占めるNK細胞の活性と好中球の貪食能が改善し、更に「獲得免疫」に必須なプロセスである抗原情報を伝える細胞の数が増えることを示しています。
現在まで、様々なサプリメントが免疫に「効く」といって宣伝されていますが、こうしたヒトの二重盲検試験でその詳細な機能が確かめられたものは、数えるほどしかありません。
ラクトフェリンは一部の牛乳やチーズにも含まれていますがごく少量であるため、
サプリメントとして摂取するのが現実的です。
またサプリメントであっても、ラクトフェリンが腸まで届く、
腸溶性加工がされている製品を選ぶ必要があります。
ラクトフェリンを使った様々な実験や臨床試験では多くの場合、1日あたり100~700mgの投与量を前提としています。
ラクトフェリンは多く摂取しても目立った副作用がないので多く摂取することへの心配は必要ありませんが、摂取量が少なすぎると期待した効果が得られませんので、製品に書かれた摂取量や論文で報告された摂取量を守る必要があります。
一般的に市販されている牛乳やチーズには、ラクトフェリンは全く含まれていません。低温で殺菌された牛乳やチーズでは、ごく少量のラクトフェリンが含まれています。
例えば低温殺菌乳には200mg/Lのラクトフェリンが含まれていますので、毎日1.5Lの牛乳を飲めば300mgのラクトフェリンを摂取できることになります。しかしながら毎日の栄養バランスを考えると、ラクトフェリンの摂取のために毎日牛乳を1.5Lも飲むよりサプリメントを摂取することの方が現実的です。
現在、ラクトフェリンを含有する様々なサプリメント製品や食品が市販されていますが、本当に効果がある製品か、見極めるために3つのポイントを参考にしてください。
1. ラクトフェリンの摂取量
例えば免疫の働きを改善する場合、1日当たり300mgが摂取量の目安ですが、数ミリグラムやせいぜい100mg位しか含まれない製品が大半です。1日に何百個食べても有効な量のラクトフェリンが摂取できない製品があります。これは、すべての成分にいえることですが、必要な量と配合量をきちんと見極めることが大切です。
2. 腸まで届く腸溶性加工が重要
細胞内外で刺激を受け取る構造のこと
3. ラクトフェリンそのものが腸まで届くか品質も大切
サプリメントは同じ外見や形状をしていても、中に入っている成分の品質と成分がどのような仕組みで体の中に出てくるのか、という溶出特性は製品ごとにまったく異なります。
腸まで届く加工を行った製品でも、すべてに同じ効果があるわけではないことも注意すべきです。
サプリメントにはこのような課題がありますので、正しい製品を見極めて選ぶことが大事になります。
サプリメント会社の提供する情報を調べ、問い合わせることも一つの方法です。